鋳造から鍛造への切換え

鍛造化によって強度アップすることで薄肉化が可能となり、
材料費やメンテ費等を含むトータルコストの削減を実現できます。

従来「鋳造」で作られていた製品を、鍛造に切換えるケースを検討します。溶かした金属を鋳型に流し込み、冷やして固める鋳造と、金属に打撃や圧力を加えて成形する鍛造では、強度・精度・コスト等にどのような違いがあるでしょうか。

「す」の発生等、加工精度や強度不足が問題となる鋳造

鋳造とは、金属を高温で溶かし、液状にして型に流し込み成形する工法で、鋳鉄をはじめ、アルミニウム合金、銅、真鍮などの金属が使われます。ダイキャストはそれを発展させた工法で、溶融した金属を金型に圧力をかけて注入することにより、精度の高い鋳物を大量に生産することが可能です。
鋳造における最大のメリットは、形状の自由度が高いことです。基本的に鋳型が作成可能であれば、溶融可能なあらゆる金属において、大型品や複雑形状品も容易に成形することできます。

一方、鋳造のデメリットは、溶融金属が冷えて固まる時に体積が収縮し、型と素材との間に隙間ができたり、製品内部に空洞ができたりするなど、欠陥による精度・強度低下の恐れがあることです。金属の冷却・凝固時に、空気などのガスが鋳物の内部に閉じ込められて生じた空間を「す」と呼びます。「す」には、溶けた金属が冷却される際に鋳物内部に発生する、複雑な形状をした「ひけす」や、溶けた金属が鋳型に流れ込む際に空気や種々のガスを巻き込むことによって発生する、丸みを帯びた「ブローホール」などがあり、いずれも精度・強度低下の原因となります。

■鋳物に生じる代表的な欠陥解説

鋳物に生じる代表的な欠陥解説

溶けた金属が冷えて固まる際、体積が収縮するために「ひけす」と呼ばれる複雑な形状の空洞が生まれることがある。また、溶けた金属が鋳型に流れ込む際に、空気やガスを巻き込むことによって「ブローホール」と呼ばれる球状の空洞が発生する場合もある。

一方、これを鍛造に切り替えれば、打撃により組織が緻密になり強度が大幅に向上、鍛流線が生じることで反復曲げ応力にも強くなるメリットが得られます。両者の性質を身近な物で例えるなら、鋳造は茶碗にふわっと盛ったご飯で金属の内部に隙間ができ、鍛造は杵で付いた餅で内部に隙間が無く粘り強い。そうしたイメージを思い浮かべていただければよいでしょう。

鋳造品の鍛造化によるコストダウンのポイント

鍛造の材料となる丸棒は、原材料である連続鋳造棒(連鋳棒)表面の酸化皮膜を綺麗に削って切断、加熱をして、押出鍛造を実施、形を真直に整えて定尺に切断したものです。それを、各製品に合わせて切断・加熱した上で鍛造し、不要なバリを除去することでようやく製品となります。

丸棒の製造工程

1)原料配合・溶解

各種原材料を、低周波誘導炉によって溶解します。

2)連続鋳造

水冷式横型連続鋳造機あるいは縦型半連続鋳造機により、鋳塊を鋳造します。

3)切断

鋳塊を、大型のチップソーで定尺に切断し、ビレットにします。

4)加熱・押出し

ビレットを、ガス炉および誘導加熱により所定の温度まで加熱。押出し機によって直線棒状に押出します。

5)連続酸洗

押出し工程で直線棒の表面に付着した酸化物を、酸洗いにより除去します。

6)冷間抽伸

直線棒は、抽伸機のダイスを通過し、正確な形状と寸法の棒材に仕上げられます。

7)矯正・切断

抽伸された棒材は、矯正機によって真っ直ぐに仕上げられ後に、所定の長さに切断されます。

8)低温焼鈍

棒材に残っている残留応力を取除き硬さを調整するために、所定の温度で低温焼鈍が行われます。

9)完成

完成した棒材は、所定の重量又は本数で梱包、配送されます。

このような鍛造にかかる多くのプロセスを考えれば、鋳鉄や非鉄合金を熱し、型に流し込んで製品を作る鋳造の方が、材料費が安価となるのは当然のことと言えます。
したがって、現在鋳造により作られている製品を鍛造に変える場合は、「巣の発生をなくしたい」「強度を増したい」といった目的に対し、どれぐらいならコスト増に見合うかを検討する必要があります。製品の強度が高まれば、薄肉化して材料コストを下げることもできますし、耐久性がアップすることにより、修理メンテナンスが減少、トータルコストの削減も可能になります。
なお、現行鋳造部品の鍛造化にあたって実証実験が必要な場合は、同一形状の部品を削出し機械加工によって製造を行い、強度試験や実際の使用条件に合わせた耐候性試験(※用語解説参照)等を行います。削出品で問題なければ、削出品と比較して鍛造品の方が物性に優れているため、論理的には鍛造部品への転換が可能になります。

鍛造化によるコストダウンの条件

1.製品使用中のメンテナンスも含めたトータルコスト削減を目指す
2.強度や耐候性を試すには、削出し機械加工品での試験が有効

鋳造部品の鍛造化例

従来の鋳造品を鍛造化することによって高強度化が図れ、薄肉化を実現することで、材料費削減によるコストダウンが可能になります。

  • 自動車用部品
  • 船舶用部品
  • 鉄道用部品
  • 航空機用部品
  • 産業機械用部品
  • 家庭用電化製品
  • 暖房器具
  • 調理器具
  • レジャー用品
  • 建築資材

用語解説

「耐候性試験」 雨等の水分、気温、塩分、紫外線など、自然環境による劣化への耐性を短時間で評価するために、太陽光線や温湿度などを人工的に再現した環境で行う試験のこと。

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